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森の中のちいさなお店 すてきな”ギフト”みつかります


by lavvoronte

コムスメノきがい

令和元年
七月十五日、軽井沢大賀ホールにて
「俵菜緒」氏による、地唄舞公演を
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取り行った。

   *

事の始まりは、
宮崎駿監督のNHKの特集を見た事にさかのぼる
三年前の晩秋のことだった

その一月前、
久しぶりに俵氏のリサイタルが出身地足利で行われた
その時舞われた「菊の露」。
冷え込んだ秋の朝、庭の小菊に置かれた朝露をみて胸を震わせ涙する
そんな繊細な日本人の情緒に、目が覚める思いがした。
まだその余韻に浸っている最中
宮崎監督の価値観をつぶさに観察して
更に感受性を高めようと
特集に神経を全解放して見入っていた
と、そこで目にし、耳にした、現代日本人の姿
短絡的でおぞましいと感じた若者の価値観、
何故に私はこんなに気分を害されなければいけないのか
悲しくもあり憤りもありそして危機感を覚えた
あまりに日本人は心を失い過ぎている

繋げられる心が存在するうちに繋がなければ

そんな危機感は
こむすめの身の程知らずな行動
と相成った。

以下、その結末である。


*  *  *  *  *


【雪】
気配も吸い取る
雪降る夜、
かすかな物音に
出家までしても忘れられない
人を想う

   *

白く塗られた肌に、口と目もとにさされた紅
豊かな黒髪を結いあげ
裾をたっぷりと引きずり
転がす和傘に想いが乗る

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滴るほどに盛り込まれた美しい日本
この「雪」が観たい

   *

心とはなにか、
私は美意識もその一つだと考える。
心とは「感じる」力、だと思うからだ。
美しいと感じる力、きれいだと感嘆する力、儚いと愛おしむ力
切ないと共感する力、足るを知って貪りを抑止する力
無力さを改め敬意を払う力

   *

今この地唄舞を観るということ
これが、心をつくる。
決まった動き
などで表すのではなく、
その作品への舞手の想いが
削ぎ落された動きの中に宿り
百人が百様に解釈をする
舞手と見者のキャッチボール

自ずが何を感じるのか。
この問いをもって我の心に気づく
それが心をつくる

   *

そこで
大賀ホールで公演をしてもらえないかと俵氏に打ち明けた時
まず「雪」を舞って欲しいとお願いした。

軽井沢大賀ホールはクラシック専用のホールであり
その舞台は檜ではあるものの演奏者たちが革靴で闊歩するため
表面のささくれと微粒子の埃は一番の懸念材料だった。
何しろ「雪」は着物を引きずるのだ

それを解決するべく当日朝九時、
骨の髄まで知り尽くした友人3人と俵氏側のスタッフ
掃除機片手、雑巾一杯を手に鼻息も荒く
大賀ホール裏口に勢ぞろい
開門と同時に掃除に取り掛かる
皆の想いと働きのお陰で
舞台の拭き上げが終了した

そして、舞台稽古に入る
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「聴かせる」ことのためのホール故
見せるために沢山の工夫と苦労が施された
銀箔の屏風があるだけでずいぶんと雰囲気が変わった
舞台監修の写真家森田氏に指示を仰ぎ
専用外のホールでどのように見せるのか
最後の最後まで確認した

その間、私は楽屋にお邪魔していた
楽屋では俵氏の装う小物の準備がされていた

まず、鬘(カツラ)
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舞によって鬘を変える
手前は艶ものの「雪」のもの
奥は、男舞の「八島」用

私は、前髪が少し乱れているように見える手前の鬘が
八島の踊りの激しさを現わしているのかと思ったが
床山さんに「地唄舞は乱れません」
と教えて頂いた。
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簪(かんざし)などは現場に来て、着物等に合わせて付けるのだそうです
こちらは関東用の鬘らしく、現代よりに少し明るめの毛色だそです
関西用は真っ黒を用いるそうです


次は顔師さんのお仕事です
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赤だけで何種類もありました
本人に合わせて作るのだそうです

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顔師さん、この一月前に退院されたばかりです。
体調を押して、息子さんに付き添って頂きご協力くださいました。

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傍で見る日本の技、かっこいいです。


お着物です。
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俵氏が何度も京都まで足を運び衣裳さんと相談し決めていらっしゃいました。

二曲目の【八島】の着物の裾は手刺繍によるものです。
「重たい着物なんですよ」
といって触らせて下さった。
片袖を持ち上げただけだったけれど、
これを肩にかけたらずっしりとさぞ重いだろう
それで手を持ち上げたままの姿勢を続けたりするのだ。
過酷だ

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なんという風格か

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波に千鳥

【八島】
源平の古戦場、四国八島の浦が舞台です
亡霊義経の語った、修羅道の凄まじい合戦の様子
合戦中流してしまった弓を自分の名を汚さぬよう命を惜しまず敵の前に身をさらして取り戻した
そんな様子を舞います。
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*  *  *  *  *


全ての照明を消し、
真っ暗な中
衣擦れの音と気配だけが近づいてくる
客席が水を打ったようにしんと静まり返る
ッカ―ーン
拍子木の澄んだ高い音が響き
ほんのりと灯りが点き
舞が始まる

気持ちの良い緊張感

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はたして公演が終わりました。

ここへ来るまでいろいろありました
俵氏本人の入院、
先述の顔師さんの入院、
地方(ぢかた)の先生は、膝を悪くされ、立ち座りに乱れが起こり見苦しいゆえ、俵氏にご迷惑をかけるからと、高いプロ意識から2度ものお断りをされました。それを大道具さんの工夫や俵氏の説得によって難を越えての実施でした。なににつけても奇跡の公演なのでした。

後日公演の録画がDVD化される予定です





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お客様が暗い客席で描いてくださいました
舞の感激冷めやらぬ様子で後日届けて下さいました



三年かけて俵氏とたった二人、
小さな力でつなげて来た。
とっても良い集大成と相成った。
これが、
もう立派な大人の
こむすめの気概の
成果でした。





地唄舞 jiutamai
地唄「雪」俵菜緒
解説 葛西聖司
地唄「八島」俵菜緒
唄・三絃 富田清邦/菊森美穂
大道具 山本大道具
小道具・狂言方 松永和則
衣裳 京都小林衣装
着付け 奈良秀明
床山 大澤金久
顔師 新井清
写真 森田拾史郎




公演前に宣伝用にと製作して頂いた動画です。
日常を切り離す清潔感ある拍子木の音、
俵氏の美しい指の動き、
富田先生の唄い、
日本の技、
ほんの少しご覧頂く事が出来ます。
心を生み出す日本の美
ご覧下さい。











by lavvoronte | 2019-07-30 13:17 | 日本の美意識