「ほっ」と。キャンペーン

森の中のちいさなお店 すてきな”ギフト”みつかります


by lavvoronte

徒然草 沖縄にて

2015年 11月 19日
二月前から計画していた沖縄旅行を翌日に控えた日、大事な友人の訃報が届いた。万が一そんな事が起こる場合には何処へでも飛んで行こうと思っていたのに。旅行好きな彼女でインドを1人で一月もフラフラできるような強者で、彼女のおかげでアフリカ大陸モロッコヘ旅する事が出来たのは三年前の12月のことだった。もっと色んな所へ連れて行ってもらおうと思っていたのに、まさかあれが最初で最後になるなんて。不義理だなぁ、と色んな事に思いを巡らせていると、「行ってきな」と彼女なら言ってくれるように思えた。そして意を決して、彼女を抱え思いも寄らない強烈に思い出深くなる沖縄旅行ヘ出る事にした。

旅先を沖縄に決定し、航空券やらホテルの予約やら取り敢えず決めなければならないものを矢継ぎ早に抑え、「一先ず安心」してくると、旅の道ずれを何にしようかという余裕が生まれてきた。旅には本が欠かせないというほどの本好きでもロマンチストでもないのだが、そんな気分を味わってみるのもいいだろう、と本好きで旅好きな何人かの知り合いの顔を思い浮かべながら選んだタイトルは「火山のふもとで」という本だった。

この本を知ったのは、初めて社会に出た先で知り合った元同僚の早過ぎる告別式での事だった。なんだかこの旅は死と向き合わされるなぁ。

家を造ることを志し、意気揚々と一歩を踏み下ろしたその場所は、今思い返しても身に余る夢に描いたような幸せな場所だった。そんな場所で色んな事を教えてくださった先輩方と久し振りに顔を合わせたのが、人生の理不尽に砂を咬まされた元同僚の告別式だった。建築家の先輩方の話題は勿論同じ仕事をして力尽きてしまった後輩の無念さ、悔しさ。その話の延長にそれぞれの現状を重ねていく中で、こんな本が出ているという話になった。それは我々の愛する師匠がモデルになっているとしか思えない内容の珍しく建築家を取り上げた小説だ、というのだ。私は、それは読まなくてはならないと思い、帰宅早々早速ネット検索して冒頭を少し触ったのだが、その分量に読みきる自信がなく二の足を数年踏んで頭の片隅にまで追いやっていた頃の事。

地元の老舗編集社にほんの数年前に就職した若い編集者。初め、硬い表情を崩さず、私もそういう事を言うようになったかと思いながらも最近の若い者はと彼女の事を評していたのだが、同じ編集社に彼女の誤解を解いてもらい次第、私と同じ人見知りという人柄を理解してからはこちらが勝手に二皮向けた対応を向けていたら、いたらというわけでも無いと思うが、自分の大学の先生が書いた本なんです。よかったら読んでください。と差し出してくれたのがなんとそれだった。縁、というのは本当にあって、必要なものは必要な時に色んな手段で手元に届く。そんな事を感じられずにはいられない出来事と共に私の手元にやってきたのだった。

元来、本無精。実際手にしてみると懸念した以上の文字の小ささと頁数。これは何か機会を設けて丁寧に向き合いたい、と二の足を踏んだ時のように本棚に陳列させた。丁寧に機会を選ばれていたそれは他の同じ立場の本よりも数倍早く空気に触れる事となった。

9時32分発。この年3月から営業区間が延長開通された金沢からの新幹線に乗った。同行の母とは隣り合わせにはなれず、縦に並び東京駅まで1時間10分。本を開く機が訪れたのは大宮に着く頃だっただろうか。舞台は故郷軽井沢。予定通りに我が師匠の面影が色濃く、しかし想像力豊かに丁寧に細く描写されたそれを読む事20頁、主人公がどんな人物か掴みかけた頃、新幹線は終着駅のホームに滑り込んだ。

飛行機の離陸は13時丁度。山手線もモノレールも当たり前のように問題なくそれぞれの使命を果たし、我々母娘を無事に羽田まで送り届けた。羽田に着き、安心も手伝い少し贅沢な腹ごなしを済ませ、ピラっとその辺をお付き合い程度に周遊し、が、愛想もなくさっさと金属探知器を潜り、搭乗口前まで来てしまった。それでも間も無く登場のアナウンスが流れ、左右三列ずつのあまり大きく無い機内に乗り込んだ。

私には乗り込む前に決めた儀式がある。これも初社会で出会った事務所の人からの受け売りだが、その人は飛行機に乗る前にその飛行機にお願いしますと挨拶をする事を行っているという事だ。したのとしなかったのでは飛行機の揺れが絶対に違っているという話なのだ。私も揺れて欲しく無いから、それを聞いてからはそれを実行している。今回も忘れなかった。そして無事だった。

毒な位心配性の母は、モノレールに乗った時に、やっと安心した、と息を吐いていた。私は那覇空港につき荷物を受け取った所で息を吐いた。

沖縄上陸皮切りは、思ってもいない事からのスタートが待っていた。荷物を受け取り、タクシーでホテルまで連れて行ってもらう事にした。いままで行ってきた海外旅行と違い、何て緊張の無いゆとりのある旅なんだ。トランクに荷物を積んでくれている穏やかでおとなしそうな運転手さんのお顔を拝見しながらそう思った。外国の方は表情だけでは人柄は見抜けない。やはり日本人だ。と。始め、その通り言葉もなく思った人物だった運転手さんに対して思いを改めたのは、丁寧な道確認の後だった。生真面目に「信号待ちの長いレーンを避けます。避けたレーンが正規の道ですが、万が一そのレーンに戻れなかったとしても信号待ちするより回った方が時間も料金も安く済みますから。」という話だった。我々はもちろんお任せします。ご丁寧に恐縮ですという旨伝えたところ、いちいち確認しないと問題が起きますから、という現実だった。そうですかぁ、そうなんですね、と話を進めていくと、中央は机上の弁でなく現地目線の心ある考えを起こしてほしいという話に発展して行った。昨今のニュースからその思いは想像に容易かった。それにしても装甲を崩した皮の下は、強いたげられてきた沖縄そのものを感じ、最初の安心を修正した。

しかし、ホテルに着き、海を見て上げ膳据え膳温泉を味わうとやはりここは非日常。移動距離分日常から遠ざかる。

起きなくていい明日に向け寝なくていい夜を過ごしている横で、母はいつも通り軽快な寝息を立てている。ゆるい予定のでたとこ旅。明日からどんな事が起きるだろう。せっかく来たので、十分味わいたいと思うところで、一日目を閉じる事とする。

b0101300_042524.jpg

[PR]
by lavvoronte | 2015-11-20 00:43 | いってきました。